素敵な女性を追って

心の支えになる素敵な女性を追って
vol.1 幸田文『きもの』より

心の支えとなる素敵な女性。
目指すべき人生のモデル。

この条件を満たす先輩女性を思った時、真っ先に浮かんだのが、幸田文の著作『きもの』の中のおばあさん。

舞台は明治時代の終わり頃から大正時代にかけての東京下町。主人公は着物が大好きな三人姉妹の末っ子、るつ子。
私が好きなのは、このるつ子の父方の祖母、おばあさん。るつ子の人生に寄り添い、出過ぎず引っ込み過ぎず、いい塩梅の助言をします。

一番気に入っているのが、るつ子が友達に中古の着物地をあげようとした場面。

その友達は非常に貧乏で、食べるものにも着るものにも苦労していました。友達の窮状を見て、力になりたいと思ったるつ子は、父親の古い着物地をあげようと思いつきます。
お母さんにそう提案したところ、にべもなく却下。『こんな古いものを他人様にはあげられない』とお母さんは言います。
女学生(中学生くらい?)のるつ子にはその理由が分からない。そこでおばあさんに相談します。
するとおばあさんは
『親切にすることはいいことだ』
と前置きした後で、
『でも中古の物をあげるのが良くない。親切にしたいというのなら、なぜ新しいものをあげないんだい?』
とるつ子に聞くのです。
『だって、あんな新しいの、もったいないわ。』
るつ子の本音がついポロリと出てしまいます。
おばあさんは容赦しません。
『もったいないー誰にもったいないの?何にもったいないの?』
るつ子が言葉に詰まる瞬間です。

この時、るつ子は親切心の裏側に隠れた自分の醜い心に気付き、うろたえたのだろうと思います。しかし誰にでもある感情です。
私にも覚えがあるような気がしてハッとしました。

おばあさんは続けます。
『…こちらで役に立たないようなものが、あちらで役にたつかね。あげたあとでこちらの心は痛まないかね…』
『…貸し借りはものと人情が重なり合うからそう簡単じゃないんだよ…』

そう言って窘めたあと、そのままにせずに妙案を思いつくのがまた素敵なところ。
数年前に福引で当てた厚地の反物があるのでそれをあげたらどうかと提案します。
るつ子はその反物を友達に見せて言いました。 『その反物でお揃いの袴を作り、一緒に履こう』と。

友達は素直に喜んでくれ、るつ子は友人を失わずに済みました。


素敵なおばあさん。
おばあさんと言っても、およそ100年前の日本が舞台なのでそれほど高齢ではないと思います。何となく50代後半頃ではないかと想像しています。 しゃんと背筋を伸ばして身綺麗にしていて、割と色っぽいのではないかと思います。

10年後にこんな素敵なアドバイスができるだろうか。できる自分でありたいと思うのでした。

 

by 工藤

2019年01月01日