素敵な女性を追って

着物&所作のブログ 心の支えになる素敵な女性を追って vol.3 幸田文『きもの』より


心の支えとなる素敵な女性。

目指すべき人生のモデル。

3人目は別の小説にしようと思っていたのですが、『きもの』を読み返しているうちに、もう一人素敵な女性を見つけました。

この小説の著者、幸田文です。

るつ子とおばあさんの関係を中心に展開する小説『きもの』は意外な形で幕を下ろします。

おばあさんの愛情あふれる躾を受け、素敵な女性になりつつある、るつ子。
母親を看取り、横暴な二人の姉に翻弄されながらも健気さを忘れない、るつ子。

彼女はどんな幸せを手にするだろうかと楽しみに読み進めていたのに、るつ子は軽薄な男に引っかかります。家族の誰もが反対する中、るつ子は強情を通して結婚に突き進むのです。

そして結婚式の後の初夜。
るつ子は夜着に着替えます。
その夜着は父の愛人、清村そのさんが見立ててくれたものでした。愛人であるその女性に、るつ子は憧れと愛情を抱いていたのでした。
柔らかい花模様の夜着を確かめることもなく、その男はむずと抱きかかえ、押し倒し、下着をずるずると脱がしにかかるのでした。

その場面でこの小説は終わります。

あんなに着物にこだわりを持っていた、るつ子が夜着を確かめる間もなく処女を失う姿を見て、私は衝撃を覚えました。

しかしそれは10年前のこと。

今ではまた別の感覚でこの終わり方を見ています。

著者、幸田文は離婚を経験しています。
離婚後に父、露伴の元に娘と共に身を寄せ、その後小説家として自立します。

この終わり方は、私たち後輩女性へのメッセージではないかと思うのです。

『男なんて大方こんなもの。女たちよ、自立せよ。男なんて当てにするな。』

そんな風に私には聞こえるのです。
うがった見方でしょうか?

おそらくこの後、るつ子の結婚生活はうまくいかないでしょう。
しかし、るつ子は女性として大切なことをおばあさんからしっかりと仕込まれています。
そして父の愛人に憧憬の念を持っています。
主婦であった実の母親よりも、愛人である自立した女性に。

父の愛人は、母親の死後もその自立の姿勢を変えず、独身を通します。その潔さ。

るつ子は何がしかの能力を磨き、そして成長過程で培った辛抱強さを生かして自立していくのではないかと思うのです。

今では私は、るつ子に『頑張れ!』とエールを送っています。

そして著者の幸田文に、先輩女性として前を歩いてくれたことに感謝の念を持つのでした。



by 工藤

2019年01月03日